辺見 庸 角川書店 売り上げランキング: 4942
単なるグルメ旅行じゃない。
そこに住む人びとの食にまつわる歴史、
心の傷、葛藤、怒り。
それらを自分の舌で、五感で、感じる旅。
食事内容を並べるだけでも、
その旅の凄まじさの一端が、伝わってくる。
ダッカの残飯、ドイツの囚人食、猫用缶詰、
チェルノブイリの放射能汚染食品、コソボの修道院の精進料理、
ウガンダのエイズの村のマトケ、択捉島の留置場のカーシャ。
自分も味わってみたい、とは、とても思えなかったけれど、
辺見さんの、「自分の舌で世界を感じたい」という思いには、
強く共感させられました。
はっきりとした旅程はない。これといった決心もない。
ただ一つだけ、私は自身に課した。
噛み、しゃぶる音をたぐり、もの食う風景に分け入って、
人びとと同じものを、できるだけいっしょに食べ、かつ飲むこと。
食べるというのは、それぞれの民族が、
祖先や文化の記憶を味になぞることでもあるから、
「食」にかかわる差別は深く心を傷つける、と私は思う。
奇食に見えて、しかし、奇食など世界には一つとしてない。
行く先々にもの食う人びとがいて、
いまそれを食うことの十二分な理由と、
食うことと食えないことにかかわる知られざるドラマを持っていた。
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