キノシタケ
鎌倉に移住した夫+妻+娘のブログ

自分の世界が広がる瞬間

僕は小さい頃からトマトが嫌いだった。あの噛んだときに溢れて出てくる緑色をしたジュルッとした液体。酸っぱいのか甘いのか良く分からない複雑な味。見た目もなんだかグロテスク。おええ。

でも、食わず嫌いじゃない。何度も食べた。もしかしたらいつか好きになるかもしれないという好奇心に似た淡い思いから、機会があるごとにトマトをかじった。そして、かじるたびにあの緑色の液体に苦い顔をし続けてきた。

ある夜、その時は訪れた。僕は友人と居酒屋でお酒を飲んでいた。お酒が少し回った頃、友人はお酒のアテに冷やしトマトを一つ注文した。友人は冷やしトマトをパクパクむしゃむしゃ食べた。まるで果物を食べているかのように本当に美味しそうに食べた。僕は興味をそそられて、冷やしトマトを一切れ頂いた。

食べた瞬間に、おっ、美味しいかも・・・???としばらく時間が空いて、あぁ、トマトが甘くて美味しいってこういうことだったのかと初めて合点がいった。やっとトマトが美味しく感じられる世界へ迎え入れてもらったのだ。僕はこういう経験がたまらなく好きである。

思えば、ビールだって、苦い苦いと思いながら飲んでいるうちに、旨い!と思える瞬間が訪れたものだし、ピーマンの肉詰めやネバネバ系(オクラや納豆)がいつの間にか美味しく思えるようになった。そんな時には自分にとって楽しめる世界が広がった感じがして、年を重ねることもいいもんだと思ったりするのだ。

だから、僕は今でも、苦手な日本酒やウイスキーに挑戦をし続けるし、いつか美味しいと思える瞬間が来ることを確信し、待ち遠しく思っているのだ。それが30代になるのか40代になるのか、はたまた、もっともっと年をとる必要があるのか分からないけれど、とにかく待っているのだ。

こんな風に自分の世界が広がる瞬間が訪れるのは、なにも料理の話だけじゃない。あらゆる分野にも当てはまるもんじゃないかな。僕は最近になって初めてジャズやクラシック、昔流行ったロック?(エリック・クラプトンやローリングストーンズなど)を積極的に聴いたりしてるけれど、今のところ繊細な良さは理解できていない。ジョギング中に聴くと丁度良い感じはするんだけど。エリックの真髄を3分以内に答えろ、なんて問われれちゃったら、きっと返答には困ってしまうだろう。

でも、別にいいのだ。焦る必要は何もない。だって、僕は、トマトと同じようにいつの日かコレが良いんだよって思える瞬間が来ることが分かっているのだから。

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